"コンプレッサー" はDTMでは結構使うものなのですが、すきていも最初は「コンプレッサーって何?」とかなり長い間避けてました(笑)
ただこのコンプレッサーはDTMをやっていくにおいて避けて通れない上、しかも一度使い出すと奥が深くて、魅力的なプラグインがたくさん出ており、気づいた時には結構出費していました。当初まだうまく使えてないのにも関わらず…(^_^;)アラアラ
そこで皆さんには最初からすきていのように失敗(余計な出費)しないよう、またコンプレッサーと賢く付き合っていく為に、まずはコンプレッサーとは何物なのか?を簡単にわかりやすく解説してまいります。
目次
DTMにおけるコンプレッサーとは
コンプレッサーとは、"圧縮機"という通常ガスや空気等を圧縮し、連続して送り出す装置です。(タイヤに空気をいれるエアーコンプレッサーがありますね)
DTMにおいても"音を圧縮する"という部分では共通しています。
では何故音を圧縮する必要があるのでしょうか。
DAWの各パートのトラックの音声データをオーディオ形式にしてみると音声がある部分が黒いギザギザ(わかりますでしょうか?)で表されますね。
音量が大きい時は黒いギザギザも大きく突き出ており、小さい時はそのギザギザは小さくなります。
一曲の中でも音の大きさだけでもかなり大きく上下します(その音の範囲をダイナミクスといいます)が、その音源をそのままCDにしてしまったとするとどうでしょう。
音が割れてしまわないようにするには最大音量を0db以下にして音源化するのですが、何も手を加えない状態だと、まず音が割れてしまわないように最大音量(ピーク)を抑えなければいけません。ただピークを抑えるだけだと、それに伴って曲全体の音量も小さくなり、元々音量の小さいところは殆ど聴こえないということになります。
そこでコンプレッサーの出番です。
コンプレッサーで音量が大きく突き出てしまう部分(ピーク)を圧縮し、そして小さく静かな音を大きくしてやれば、大きい音と小さい音の差が小さくなり、均一化されることで音源にしたときに全体的に大きな音量になります。
プロの方のオーディオトラックの波形を見てみると黒いギザギザがトラックの限界ギリギリまで埋まっていて、殆ど真っ黒状態ということもあります。どれだけ圧縮してるの!ダイナミクスは?とびっくりな感じですね。(またその状態を、見た目から海苔波形などと言われます)
音源を世の中に出す時にはまず最低限"音量があるかないか"が問われますので(音量がある曲はそれだけで良く聴こえます)、コンプレッサーの他にもリミッター、マキシマイザーを駆使して音を大きくするのですね。
実際やってみると、そう単純な話ではないのですが、コンプレッサーの基本的な仕事は以上のような感じになります。
コンプレッサーの使い方
コンプレッサーには大体何個かツマミがついてますが、見慣れない英語が書いてありますよね。これらを一つずつ簡単に説明していきましょう。
1、Threshold(スレッショルド)
こちらはコンプレッサーの掛かる位置(音量レベル)を決めるツマミです。
Thresholdツマミで設定した位置(音量レベル)を超えた音量になった時にコンプレッサーが音を圧縮します。逆に設定した位置よりも音量が下回る部分にはコンプは掛かりません。
2、Ratio(レシオ)
レシオはThresholdで設定した音量レベルを超えた音に対して「どれだけ圧縮するか」の加減を決める要素です。2:1、4:1、6:1などの比率で表されます。
例えば「2:1」だとThresholdレベルを超えた部分の音量が1/2になります。「6:1」だと1/6に圧縮されます。
3、Attack(アタック)
Attackは音量がThresholdレベルを超えた時に、レシオで設定した圧縮比に到達するまでの時間をどれくらいにするかというツマミです。
こちらでコンプの掛かりを早くしたり遅くしたりできる訳です。例えばコンプの掛かりが早いと音の立ち上がりを圧縮するのでピークが潰れた歪みのある丸い音になり、遅く設定すると、音の立ち上がりが強調された形になり少し硬めの輪郭がくっきりした音になります。(これがドラムでは結構重要ですよね)
4、Release(リリース)
こちらはThresholdレベルを下回った時に、元の音量まで戻るまでの時間を調整します。早いと圧縮をすぐに止めるので元の音量にすぐに戻ります。逆に遅いと長い間コンプが掛かった状態(圧縮)になります。
Releaseを早くすると圧縮も早く終わり、早く元の音量に戻るので、ナチュラルな余韻のある音になります。Releaseを遅くすると長く圧縮されるので、余韻も抑えられてタイトな音になります。
5、Knee(ニー)
コンプレッサーはThresholdレベルを境にコンプが「掛かる」、「掛からない」が分かれるのですが、その2択だとThresholdレベル付近の音が不自然になるので、それを中和させるような仕組みがKnee(ニー)です。訳すと膝ですね。
Kneeは「ハードニー」と「ソフトニー」があります。
「ハードニー」はThresholdの音量レベル位置でくっきりと圧縮、非圧縮が分かれ、圧縮もレシオ通りの圧縮に向かいます。「ソフトニー」はThresholdレベル付近のコンプがレシオよりも緩やかに掛かって違和感を無くします。
6、Gain(ゲイン)
コンプを掛けて、音量の大小の差を無くしただけでは音量は上がりません。そこで音量レベルを上げるのがゲインです。
基本的には圧縮した分だけ音量を上げてやるぐらいが良いでしょう。
コンプレッサーの使い方でしたが、これに関してはどれくらいの数値にすれば正解というのは無く、曲のテンポに合わせ各ツマミを回しながら音の変化やメーターを確認し、よい塩梅にしていくしかありません。
ですので、各ツマミの内容を覚えたら色々と自分で試してみましょう。
それでは使い方を覚えたところで、コンプレッサーの種類を見ていきましょう。
コンプレッサーの種類とおすすめ機種、プラグイン
コンプレッサーには代表的な4つの種類(タイプ)があります。それぞれに特徴があるので、パートによってタイプ使い分けるのが賢明です。
おすすめプラグインのご紹介なのですが、今回はプラグインの他に実機も紹介しますので、皆さんの好みのメーカーのプラグインを手に入れてもらえればと思います。
(プラグインはすきていが所持しているWavesやNative Instrumentsを中心に紹介しています。Wavesはセールで安く手に入るのが初心者の方にもグッドですね!)
1、Optoタイプ(光学式)
Optoタイプは音量を光に変換し、その光の量でコンプの掛かり具合を調整する仕組みです。
代表的な機種はTeletronix社のLA-2AやLA-3Aです。
おすすめプラグインはLA-2AをモデリングしたWaves CLA-2Aです。人気の高いプラグインですが、現在は恒常的にセールが行われており、4千円位で手に入ります。
ナチュラルで柔らかいコンプの掛かり方で、ボーカルやアコースティックギターによく合います。
また有名な機体だけあって各社からモデリングされたプラグインが出ております。
こちらはNative Instrumentsから出ているVC-2Aです。高品質エフェクトプラグインで有名なSofttubeと共同で開発しているプラグインです。
こちらもシルキーでナチュラルなサウンドなのでボーカルやアコースティックギターによく合います。
本家を受け継いでいるUniversal Audioのプラグインを所持している方は羨ましいですね~♪ 何も悩む必要はありません。もう是非そちらを使ってください!
2、FTFタイプ(トランジスタ式)
有名なUniversal Audioの1176がFTFタイプの代表です。(実機はお値段高くて手が出ないですね、でも欲しい~)
UNIVERSAL AUDIO 1176LN サウンドハウス
おすすめプラグインはWaves CLA-76ですが、UADプラグインが使用できる環境でしたら本家のそちらの方が良いと思います。(UADプラグインは高品質ですが、専用のDSPが必要です。)
こちらはレスポンスが速く、Attack(アタック)、Release(リリース)も速く設定できるので、アタックが重要になってくるドラム等に使用すると相性が良いです。
そしてこちらはNative InstrumentsのVC-76です。どのプラグインも大体見た目も型番も寄せているので、どの実機をモデリングしたのかわかりますね。
こちらもクリアでパンチのあるサウンドでドラムに向いてます。
3、VCAタイプ(電圧式)
VCAタイプのコンプレッサーはレスポンスが速いことがよく知られています。
有名な機種はdbx-160やSSLバスコンプです。
おすすめはWaves SSL G Master Buss Compressorでバストラックに使ってます。変な癖がなくていいですね。
ノイズが少なくまとまり感があるので、バスコンプとしてバストラック、マスタートラックにも使われるコンプレッサーです。
そしてこちらはNative InstrumentsのVC160です。
ヴィンテージのVCAコンプレッサーをモデリングしており、ドラムやベースのミキシングに適しています。クラシックなざらついた雰囲気やドライブを少し足したりということもできます。
なお今回ご紹介しましたNative Instrumentsのコンプレッサー達はKOMPLETE13 ULTIMATEに全部入っております。
おすすめマルチ音源 KOMPLETE13 ULTIMATEは買いなのか!?【外付けSSDへのダウンロード方法も】
4、Tubeタイプ(真空管式)
真空管タイプではfairchild660、670といったクラシカルなコンプが有名です。
おすすめはWaves Puigchild 670です。
真空管特有の温かみのあるコンプで倍音効果で中低音域が太くなります。
ノブのツマミを回していなくても味付けで通すだけの使い方もよくされます。
コンプレッサーまとめ
これまでコンプレッサーの使い方や種類、実機をモデリングしたプラグインを紹介してまいりましたが、他にもデジタルコンプレッサー、MB(マルチバンド)コンプレッサーがあります。(MBコンプレッサーは複数の帯域を自由に選んでコンプを掛けることができます。)
デジタルコンプレッサーではコンプの掛け具合などが見てわかるFabfilter Pro-C2が使いやすくておすすめです。(モデリング系のコンプのようにそれぞれのキャラクター(8種類)も選べます)とにかく超高性能なんです!
またMB(マルチバンド)コンプレッサーも同じくFabfilter Pro-MBがこの際おすすめです。(MBコンプレッサーは帯域を分け狙ってコンプレッサーを掛けることができます)
これだけFabfilter推しだと、まわし者かと思われるかもしれないですね(笑)
ただ何故Fabfilterで揃えてしまうのもひとつの手かというと、Fabfilterは同社の製品を買えば買うほど値引率が高くなるシステムで、どの製品も高性能でGUIも非常に見易く、直感的に操作ができるなど、初心者に親切な設計だからです。(それゆえProシリーズのどの製品も、その名の通りプロ御用達になりつつあります。)
ただこれも毎度毎度で言いますが、DAW付属のコンプレッサーもどんどん高性能になっており、デジタルコンプレッサーから実機をモデリングしたタイプまで揃っていることが殆どなので、まずはそれを使いこなしてから、有料プラグインを購入すべきかどうか考えていきましょう!(あとチャンネルストリップ プラグインを持っている方も、コンプが付いていることが殆どなのでチェックしてみましょう)